糖尿病は、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が高くなり、尿に糖分が排出される病気で、コントロール不良の場合は、心筋梗塞、脳梗塞などのリスクも上がりますし、腎不全や神経症状、眼病変などを引き起こします。また、進行した場合は、インスリン治療が必要となります。当院における糖尿病治療は、日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会の糖尿病標準診療マニュアルに準拠して行っております。このマニュアルは、次のアドレスに載っておりますので、クリックしてみてください。http://human-data.or.jp/wp/wp-content/uploads/2020/04/DMmanual_16.pdf
ただし、あくまでもマニュアルですので個々の患者さんの状態により、治療方法はマニュアル通りとならない場合もあります。当院では、インスリン導入などが必要な場合や、合併症が進行している場合は、東大阪医療センターなどの糖尿病内科と連携して診療を行います。また、1HbA1cという採血数値を、糖尿病のコントロール指標として使用しますが、当院ではArkrey社のLab001を採用しております。この機械は、90秒で結果が出るうえに、大学病院や糖尿病専門施設でHbA1cの測定の時に使用されているHPLC法と同等の精度を持っております。したがって、受診時に採血をしていただいて、あまりお待たせすることがなく、正確な診療が可能となりました。
それでは、糖尿病の詳しい説明を行います。膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが、血液中のブドウ糖を細胞の中に取り入れる役割を果たしています。しかし、生活習慣の欧米化に従って、体重増加や運動量の低下などが持続すると、インスリンの分泌量が不足したり、効きが悪くなったりすると、ブドウ糖が細胞内に取り込まれなくなり、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が高くなってしまいます。血糖が高いということは、体の細胞にエネルギーであるブドウ糖が十分に補給されず、そのため全身の細胞の働きが悪くなります。のどが渇く、尿が多い、傷が治りにくい、感染症にかかりやすい、疲れやすい、集中できないなどの症状が表れます。
この、いわゆる糖尿病予備軍の状態で、生活習慣の改善を行うことができたら、薬物療法などは不要となりますが、病状が進行すると、薬物療法が必要となります。近年、糖尿病薬は目覚ましい進歩を得ており、種類も増えております。当院では、東大阪医療センターなどと提携をしながら新たな治療法も積極的に導入しています。薬物療法が効かなくなると、インスリンの自己注射の必要がでてきます。インスリンも様々な種類がありますので、患者さんの生活習慣を鑑みて治療法を選択していきます。
生活習慣の欧米化に伴い、日本においても患者数が増加しており、糖尿病患者で約300万人、いわゆる糖尿病予備軍をふくめると1000万人と推定されています。糖尿病が進行すると、糖尿病性腎症、神経症、網膜症などの合併症を引き起こします。糖尿病性腎症から腎不全となり、人工透析の導入に至る患者さんが少なくありません。また、糖尿病患者さんでは発がん率が高くなることが知られており、実は糖尿病患者の死因第1位は悪性新生物(がん)の38.3%となっています。死因となったがんの中でもっとも多かったのは肺がんで次いで肝臓がん、膵臓がんと続きます。したがって、糖尿病患者さんは、癌のスクリーニングを定期的に行う必要があります。
当院では胃は内視鏡検査により、大腸は便潜血のチェックを行ったうえで、必要であれば大腸内視鏡検査を行います。その際、切除したほうが良いポリープがあれば安全性を鑑みたうえで、切除を行います。また、肝臓などは腹部エコーでスクリーニングを行います。膵臓癌のリスクも糖尿病患者さんにおいて上昇します。当院では腹部エコーによるスクリーニングを定期的に行いますが、膵臓の尾部においては、エコーの検出能力が低下しますので、病診連携で周辺病院で腹部CTを行っていただきます。また、肺がんのリスクもありますので、胸部レントゲン写真を当院で行いスクリーニングします。リスクによっては、胸部CTによるスクリーニングも行います。