私が、内視鏡検査を始めた20年前に比べると、内視鏡機器は各段に進歩しました。以前は、フィルムで写真を撮っていましたが、いまでは電子情報でファイリングされますし、鼻から挿入できる細径の胃カメラも出てきました。大腸カメラも、可変と言って、内視鏡の腰の硬さを検査中に調整できるようになりました。また、特殊光検査も行えるようになり病変を認識しやすくなりました。このような経緯を踏まえ、当院の開設に当たって、内視鏡検査の機器として、2018年に発売された富士フィルム社のEL‐6000を採用いたしました。
EL-6000は、LCI、BLIという2種類の特殊光観察が可能です。これにより、癌の描出、発見が行いやすくなります。胃カメラ、大腸カメラそれぞれで、描出したい病変が異なりますので、通常光観察、LCI、BLIを組み合わせてより良い方法で検査を行います。
これらの方法により、より正確で速やかな検査が行えます。
また、2023年3月から診断の正確性を増すために、AIによる診断機能を付けました。これは、CADEYEという富士フィルムが作成したAIによる内視鏡診断機械です。現状では、AIによる内視鏡検査の診断能は成長過程にありますが、あらゆる分野でAIの関与が増すと考えられ、今後の成長も期待し導入致しました。これは、私の内視鏡の師匠が、「自分の目を信頼してもよいが、信用してはいけない」と言っていたこともあります。ただし、内視鏡学会でもAIに依存してしまうリスクが心配されており、AIとディスカッションしながら、自分でしっかりと診断するイメージです。
実際のAI画面は下のようになります。AIが青色の【】内の早期胃がんを診断しています。
また、当院ではより細い、経鼻内視鏡も備えました。この細い内視鏡を経口で挿入することにより、喉元の負担が減ります。胃カメラの予約をいただくときに、沈静(眠り薬)の注射が必要か、鼻から挿入するか、口から挿入するかをお聞きいたします。
当院では、日本内視鏡学会の定めるガイドラインに従い、内視鏡の洗浄を主なっております。これにより、内視鏡を介した感染を防ぐことができます。洗浄機も富士フィルム社製を使用しております。
内視鏡洗浄機
内視鏡検査実績
内視鏡の検査実績は以下の通りです。ピロリ菌除菌は別項の「ピロリ菌」をご参照ください。除菌を行うことにより、胃炎の沈静化、潰瘍のリスク、胃がんのリスクを下げることができます。大腸ポリペクトミーは56件行い、合併症はありませんでした。
胃カメラ | 大腸カメラ | 合計 | ピロリ菌除菌 | 大腸ポリペクトミー | |
---|---|---|---|---|---|
2020年 | 79 | 17 | 96 | 14 | 4 |
2021年 | 243 | 102 | 345 | 31 | 56 |
2022年 | 277 | 136 | 413 | 47 | 61 |
2023年 | 315 | 160 | 475 | 43 | 89 |